感想ノート

観劇の感想など。一部ネタバレしてます。

おとめ妖怪ざくろ

おとめ妖怪ざくろを観劇した。

公演が始まる前からDVDを予約しないとイベントに参加できないとか、公式が定価以下を出しちゃったりとか、なんとなく納得しかねることがたくさんあって、でも作品を観ないところで良し悪しを判断したくないとも思って、公演前々日にチケットを譲ってもらった。

結論からいうと、面白かった。原作を知らないので、ここが改変されてるとか、本当はこういうキャラなのにとか、そういう気持ちにならないのもあるかもしれないけれど、長い作品を2時間でよくまとめたなと思えるくらいには、ストーリーがわかりやすく、展開にもついていきやすかった。3人のカップルが想い合うのも自然な流れで観ることができたから、話が多少急に進んでも唐突に感じることもなかったし、その中でコバケンさんの存在がいいスパイスになっていて、ただの2.5次元でなく、小劇場系の芝居を観てるような感覚になったりもした。

主演の遊馬くんも私はなかなかよかったと思う。まず、背が高くてスタイルがいいというのは、それだけで魅力的だった。発声はまだまだ経験不足かなと思う場面が何度かあったけど、それと同じくらい良い声だと感じることもあって、いまおそらくアニメの声優さんに似せようと無理して作ってる声色が自然になったら、もっといいんじゃないかなと思った。ただ、初主演と銘打たれて、集客のプレッシャーや批判を一身に受けてるのにもかかわらず、どう考えても総角は主役ではなかったので、少し可哀想に思った。総角役が主演と言うのなら、多少改変したとしても彼視点で脚本を描いてあげないと箔がつかないのではないかな。実際どう贔屓目に見たって、主役はざくろだったし、ざくろが主役じゃないとおかしい脚本だったわけなんだけど、彼は座長として頑張らなくてはいけなくて、というところに、なんとなくアンバランスさを感じた。なんせ、座長という大役に対しての必死感がすごかったので、そこまでプレッシャーかかってるのに、ストーリー上主役じゃないというのは、なんとも損な役回りだったかも。

あと、彼はお見送りのとき、誰よりもニコニコしていて、誰よりもありがとうございますって言い続けていて、褒められれば嬉しいという気持ちを表情でも言葉でも表していたのが、印象的だった。終演後のお見送りって、要はチケットが売れないからやるんだろうけど、それでもあんなに一生懸命お見送られて嫌な気持ちになる人はいないんじゃないかと思うくらい頑張っていた。私なんて、いざとなるとかっこよかったですくらいしか言ってあげられないんだけど、そんな単純な褒め言葉しか送れなくても、ありがとう、嬉しいですと丁寧に返してくれて、好感度上がった。媚びてると言われることもあると思うけど、自分のファン以外の客に、自分のファンになってもらおうと媚びることは、なかなかに努力が必要なんじゃないかと思うし、純粋に頑張ってるなと思った。

ざくろ役の野田和佳子さんがまた華があって、まさにヒロインだった。歌もうまいし(でも少し歌いにくそうな曲すぎた気がする)、申し分なかった。ざくろのときも勿論可愛いんだけど、特に突羽根のビジュアルのときは息をのむ美しさだった。作中でも天女と評されていたけど、まさに天女のように綺麗だったし、途中までざくろの子と同一人物に見えなかった。

あと、個人的には薄蛍ちゃんがすごく可愛くて、演技も繊細でいいなって思った。普段はアイドルとは全然思えないくらいお上手だったので、是非他の舞台でも観てみたいなと思った。

他の出演者の方々は若い女の子が多かったんだけど、総じてお上手だったのと、安里くんが私の持ってるイメージとは全然違っていて、びっくりしたし、かっこよかった。演じ方によっては共感してもらえなそうな役だったけど、情けないところも、まとめて好きになれるようなキャラクターになっていて、うまい子なんだなと思った。

 

だけど、こんな前向きな感想が書けるのは、多分私が定価以下で譲られたチケットで観ているからなんだと思う。最近どこもチケット代が上がる一方だけど、8000円のチケット代というのはかなり高いという認識が制作側にはあるのだろうか。ファンはどんなものでもいくらでもお金を使ってくれると思っているのだろうか。正直面白かったし、特に芝居に大きく不満があるわけではない。だけど、8000円の芝居かどうかと言われれば、セット、キャスト、劇場、制作、いろんなものを総合してみると、その値段のものだったとは思えなかった。私はせいぜい5000円くらいかなと思った。いくらならチケット代出せるかなんて、人それぞれの感覚にも寄るとは思うけど、実際公式が値下げチケットやリピーターチケットとして販売したチケットの金額が5000円だったから、おそらく一般的にはこれくらいの金額が出せるギリギリのところなんじゃないかと思った。そして、リピーターチケットで3000円も値下げするのを、私は初めて見たんだけど、こんな大幅にあっさり下げるくらいだから、制作側も元々5000円くらいの価格設定でいいと思ってたんじゃないかと思う。それでも強気の価格設定にしたということは、まぁ、出演者の固定ファンがこれくらい出すと踏んでいたんだろうな。相場より高くても、どうせ買うんだろと。

イープラス先行予約特典、出演者オリジナル特典付き最速先行予約特典、S席特典。この舞台では推しの写っている特典を制覇するためには、それだけで3公演分チケットを買わないといけない。その上、DVD発売イベントに参加するためには舞台を観る前に6800円+税のDVDを予約しないといけない。さらに物販もあって、すっかりおなじみのブラインドパッケージものも何種類かあって、最後の最後、初日にはなんか10000円のA2写真を売っていた。推しの為に惜しみなくお金を使うのがファンなのではという定義に対して、ある程度共感する私でさえ、このレベルでの出費が続いたらと思うとゾッとしてしまった。推しも退社前はホストちゃんくらいしかこういうのなくて、そのあとはネルケの大きめの2.5次元と東宝ばっかり観ていたから、本当に衝撃的だった…。いま、推しのために小さめの2.5次元の舞台に全通して物販コンプリートするのこんなに大変なの…?これに加えて、写真集とかよくわからんDVDとか、トレーディングカードとか、そういうものの販売も流行ってるけど、それ全部追うのって本当に大変だと思う。若手俳優の引退が相次いだ頃、いつまでも推しがいると思うなといった論調が多かったけど、逆にいつまでもファンがいると思うなと思ってしまった。平日も駆けつけるし、高くてもチケット買ってくれるし、同じもの何個も買ってくれるから、誤解を生んでるのかもしれないけど、ファンは大抵ただのOLだし、そんな生活に余裕があるわけでもないよ。どうか、いい関係を築かせていただきたい…。なんか、勝手に今後の自分の若手俳優オタ人生に不安を感じてしまったのでした。