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感想ノート

観劇の感想など。一部ネタバレしてます。

雪組「星逢一夜」



夏休みを無理やりとりまして、宝塚大劇場まで足を運び、雪組「星逢一夜」を観劇しました。壮さんトップ時代から、和物の雪組復活ということで、和物が増えた雪組。ちぎみゆの大劇場二作目も和物だった。(ちなみに、博多座公演も和物だし、次もるろ剣ということだが、私はぜひとも咲妃嬢のヒラヒラフリフリが観たいため、若干不満ではあるが。)

あらすじ(公式より)
時は江戸中期、徳川吉宗の治世。とある藩で起きた叛乱を背景に、藩主の子息、天野晴興(あまのはるおき)と身分なき娘、泉(せん)の恋を、烈しく哀切に描きだす。
江戸から遠く離れた九州の緑深き里、山々に囲まれた三日月藩の小さな空を見上げ、天文学に夢中になる少年晴興(幼名 紀之介(きのすけ))は、里の娘、泉やその幼馴染の源太と一緒に星観(ほしみ)の櫓(やぐら)を組みあげて、星探しに明け暮れる日々。晴興は、二人と身分を超えて友情を育むが、少年時代が終わりを告げるころ、別れは突然訪れる。遠い江戸で将軍吉宗に伺候することになった晴興。晴興を思い続ける泉と、泉に心寄せる源太。彼らには思うままにならぬ運命が待ち受けていた。大人になった三人の関係は、巡る星々のもと、目に見えぬ力によって変貌させられて……。
江戸での晴興の躍進は、はからずも三日月の領民らの困窮を招いてゆく。ついに起きた叛乱の中で、晴興と泉、源太の愛は、哀しく鮮烈な軌跡を描いて、破局へと向かい始める。

一言でいえば悲恋でした。
藩主の息子の紀之介と平民の泉は、惹かれ合い想い合うがお互いの立場ゆえに共に生きることはできず、泉は幼なじみの源太と結婚する。(つまり、ルパンに引き続きまたしてもちぎみゆはくっつかないのだ。)
そして、紀之介と源太もまたお互いの立場ゆえに戦いあうことになるのである。

紀之介のちぎちゃんは、とにかく美しく、物語序盤はこんなに美しいのに、方言出まくりでとにかく愛おしい。かわいい。そして、だからこそ、綺麗な江戸ことばしか使わないのが、切なくて仕方がない。話し方の違いが、彼は地位と名誉と引き換えに、大切なものを手放さねばならねばならなかったと、ありありと実感させられる。
まあ、正直にいうと最後源太を殺しておいて、将軍の元にも戻らず、藩も離れるというのはいかがなものかと思った。お前がいなくなったら、この藩を誰が守るのだ。信念があるから源太を斬ったのではないのか。と。しかし、ちぎちゃんの無理やり作ったかのような笑顔を観たらそんな感情は吹き飛ぶのだ。伯爵令嬢のときも思ったが(かなり俺様で勝手でコリンヌを手に入れるくだりは誘拐に近い)、どんなに行動に辻褄があってないように見えても、なぜかちぎちゃんが演ると納得させられるのである。

泉の咲妃みゆちゃんにはとにかく圧倒された。おさげの田舎娘から二児の母まで、幅広い年齢を演じ分ける。たぶん、彼女はおばあちゃんも演れる。ラストシーンは、冒頭同様に子供時代の回想になる。私はここでとにかくぼろぼろに泣いた素晴らしいラストなのだが、ここがおばあちゃんになった泉でもいいと思った。
ちなみに、前述の通りヒロインであるものの、トップとも結ばれず、二番手とも死別する役なので、宝塚の娘役としてはあまりいい役ではないかもしれない。大劇場お披露目のマリーアントワネットに続き、不遇と言われてもおかしくない役続きのような気もする。でも、そう思わせない力が咲妃みゆにはある。咲妃みゆが演じれば、どんな役だってヒロインなのだ。

源太のだいもんはかっこよすぎる。嫁にしてくれ。
肝心なところでは亭主関白なんだけど、偉そうではなくて素敵。私はごちそうがない代わりにとお湯で足を拭いてくれる泉に、ごちそうさまって言うシーンがお気に入りだ。
紀之介との一騎打ちのシーンは、紀之介のことをよくわかっているからこそ、ああいう道を選んだのではないかなぁと思った。村のみんなのことも、紀之介のことも守って死ぬのが、優しすぎる。あと、発する言葉は想いとは逆なのだろうと思わせるだいもんすごい。
源太はすごくおいしい役で、ほとんどの観客は源太に惚れて帰ると思うのだが、あんなにも源太をおいしい役にしたのは、やっぱりだいもんが強くかっこいいからだと思う。アルカポネのときも思ったが、とにかく頼り甲斐のあう役が似合うのだ。いや、カリストロ伯爵は結構ダメな男だったか…。ヘタレもできるとはだいもん最強である。

ハッピーエンドではなかった。でも、バッドエンドなわけでもないのだ。誰も間違ったことはしていないし、誰も己の不幸を呪ってはいない。だからこそ、冒頭のラストの子供たちのシーンが切なく響いた。大人になるというのはかくも苦しいものである。